公正証書や調停、審判などで婚姻費用や養育費の支払いが決まったのに、相手が払わない場合、強制執行(差し押さえ)による取り立てが可能です。
ここでは、婚姻費用や養育費を払ってもらえないときの差し押さえの手続きについて解説します。
このページの目次
1.強制執行(差し押さえ)とは
強制執行(差し押さえ)とは、債務者の資産や債権を差し押さえて債権回収するための手続きです。公正証書や調停などで婚姻費用や養育費の約束をしても、相手が払わないケースは少なくありません。
そんなとき、相手の給料や預金、保険や不動産などの資産を差し押さえれば、支払いを受けられる可能性があります。
2.強制執行の対象資産
強制執行の対象となるのは以下のような資産です。
- 給料やボーナス(手取り額の2分の1、手取り額が66万円を超える場合は33万円を超える全額)
- 預金
- 保険
- 社内積立
- 株、投資信託
- 車
- 不動産
- 動産類
養育費や婚姻費用を滞納されているなら、給料の差し押さえが有効です。いったん給料を差し押さえると、給料やボーナスの手取り額の2分の1までの金額を毎月、継続的に受け取れるようになるので、不払いのリスクを大きく抑えられます。
手取り額が66万円を超える場合は、33万円を超える全額を差し押さえることができます。
3.差し押さえに必要な情報
強制執行をするには、相手の財産や債権を特定しなければなりません。
たとえば給料の場合でしたら、勤務先の特定が必要です。預金の場合には、金融機関名と支店名の特定が必要ですし、保険なら保険会社を特定しなければなりません。
4.財産の情報を入手するための手続き
民事執行法により、債権者が債務者の資産を特定するための手続きが認められています。
4-1.財産開示手続き
債務者本人を裁判所へ呼び出し、財産内容を開示させる手続きです。呼び出しに応じない場合や虚偽の報告をした場合には、適用される罰則もあります。
4-2.第三者からの情報取得手続き
裁判所が、年金事務所や市町村役場、法務局や金融機関に相手に関する情報を照会してくれる手続きです。
相手の勤務先や、預金口座のある金融機関などを特定できる可能性があります。
5.強制執行申立の手順、方法
給料を差し押さえる場合の手順をみてみましょう。
5-1.必要書類
- 公正証書や調停調書、審判書や判決書、和解調書などの債務名義
- 執行文
- 送達証明書
- 住民票
- 戸籍謄本
- 資格証明書(第三債務者が法人の場合)
- 債権差押命令申立書
- 目録(当事者目録、差押債権目録、請求債権目録)
相手方に支払っている給与があるかどうかや、その金額を確認するため、「第三債務者に対する陳述催告の申立て」も行っておくのが良いでしょう。
5-2.申立先
相手方の住所地を管轄する地方裁判所です。相手の住所が不明な場合、会社の所在地の地方裁判所への申立も可能です。
債権差押命令が出たら、会社に直接連絡して、給与から未払いの養育費や婚姻費用の取り立てができます。預金や保険についても基本的には同じ流れです。
強制執行を成功させるには、時間をかけないことが重要です。相手に気づかれると、預金を引き出されてしまったり、転職されたりするリスクが高くなってしまいます。弁護士が手続きを代行するとスピーディに進められるので、まずはご相談ください。